ウェルネスツーリズムあいあい

声がおっきくて、豪快だけど、とっても繊細。ちゃんと叱ってくれて、どんな偉い人にも悪いものは、悪いと言う。でも、根底にはいつも愛があって、正義感が人一倍強く、義理・人情がとっても厚い。お茶目で可愛らしい少女の様な面が沢山あった椎名先生。
令和3年6月に入ってから急に症状が悪化され入院。でも「家の冷蔵庫から大福を持ってきて欲しい」とメールが来たときは、ホッとしました。また「美味しいコーヒーが飲みたいな」とメールが来たのですが、先生好みのものが買えない状況だったので、院内のコーヒーを買っていくと「まず！！」と第一声。そんな状況でも椎名節が出た事が本当に嬉しかったです。旅立つ5日前。「アイスが食べたい」とメールがきたので買って駆け付けると意識レベルが低下し目が開かない状態でした。でも、楽な姿勢を作りマッサージすると手でOKジェスチャー。そして、口に少量のアイスを乗せると「もっと！！」と大きな声が出たときは、驚きと嬉しさでいっぱい。でも、それが最後に聞けたお声でした。間もなくして人工呼吸器が付けられましたが、声は届いているのが分かりました。「先生のおかげで私は知らない世界を沢山知ることが出来ました」と伝えると、ぎゅっと手を握ってくれた手の温もりは忘れられません。

朝起きて洗顔、朝食、着替え、掃除や洗濯、仕事や買い物に外出、入浴・・・病気になったり、障害を持ったり、年を重ねて若い頃と同じことができなくなると「普通の生活ができること」がどれだけ幸せなのかわかりますね。当たり前の日常生活が当たり前でなくなることは悲しくてつらいことです。
私は作業療法士という専門職として23年間急性期の病院に勤務した後、20年近く大学で教えて来ました。病院時代の患者さんの中で脊髄損傷の後遺症の方々とそのご家族を中心としたチームで旅行・パーティー・家族会など活動を継続してきました。その中から得られたことは数多くあります。一般の人達よりはハンディキャップの方達と近いところにいたと思っています。しかし、まさかまさかなのですが、私自身が12年前に原因不明の呼吸器の難病で少しずつ運動が制限されてきてしまいました。ここ数年は在宅酸素療法で24時間吸入が必要です。もっともっと働いて、遊んで優雅な老後を予定していたのですが、人生予定通りには行かないものです。
悲しんだり、悔やんだりした時期もありましたが、12年も経つと充分受容できています。若い頃研修や勉強のために訪れた外国で忙しく貧しく滞在した地にいずれはのんびり優雅に遊びに来たいと思っていた所がいくつかあります。出かけるのがなかなか難しくなってしまったことがとても残念ですが、手助けして頂いて可能になります。
日常はとても大切です。そしてその日常をより活性化してくれるのが非日常的なことです。「旅」はこの非日常性そのものです。1年365日のうちのたった3泊4日の「旅」1回でも残り361日の日常生活を活き活きとさせてくれます。旅行の計画から始まり、旅の最中の「上げ膳据え膳」はとりわけ嬉しいですね。出かける前に目的地の訪ねたい所を調べ検討するのはワクワクしてきます。3泊4日以上の時間を楽しませてくれます。